ポータブルデスクトップは、フォームファクター次第で高いパフォーマンスと高いセキュリティを確保できる。しかしデスクトップ仮想化ほど幅広いユースケースには対応できないようだ。
仮想デスクトップへの移行は簡単ではない。コストも掛かるし、エンドユーザーとIT担当者の習得も必要だ。そうした理由から、代わりに「Windows to Go」などのポータブルデスクトップを使えないかと考える企業もあるだろう。
ポータブルデスクトップも仮想デスクトップも万能ではない。どちらが自社の要件に合っているのか、IT担当者はよく検討する必要がある。
まず、ポータブルデスクトップには2種類ある。1つはPCタイプで、一般的なノートPCよりは大型で能力も高い。ノートPC程度の筐体でありながら、デスクトップPC並みのパワーを持つ。もう1つはリムーバブルメディアタイプで、USBフラッシュドライブなどからブートできるポータブルデスクトップだ。
ポータブルデスクトップマシン
仮想デスクトップの代わりにポータブルデスクトップマシンを使う主な利点はパフォーマンスが高いことだ。仮想デスクトップでも設定次第で大抵のアプリケーションを実行できるが、ポータブルデスクトップマシンはハイデマンドなアプリケーションに特化しており、一般的な仮想デスクトップよりも、大量のメモリと高い処理能力やグラフィック処理を必要とするアプリケーションも実行できる。
ポータブルデスクトップマシンの最大の難点は大きさと価格だ。一般的な販売価格はハイエンドノートPCほどもする。しかも大抵は通常のノートPCより大きくて重い。一般的なノートPC用バッグには収まらず、飛行機のトレイテーブルで使えるものではない。
多くのポータブルデスクトップマシンはバッテリー駆動可能だが、バッテリー駆動時間は短く、2時間ももたないことが多い。
リムーバブルメディアのポータブルデスクトップ
リムーバブルメディアのポータブルデスクトップの代表例として「Windows 10 Enterprise Edition」のWindows to Goがある。USBフラッシュドライブから会社用デスクトップをブートして実行できる機能だ。
このタイプのポータブルデスクトップは仮想デスクトップと似ている部分が多い。どちらも会社が直接管理していないデバイスから会社のデスクトップにアクセスできる。
Windows to Goが仮想デスクトップより優れているところは、アカウント認証情報などの機密情報の漏えいリスクが低いことだ。仮想デスクトップの場合、私物デバイスからアクセスするとき、デバイスのネイティブOSを起動し、アプリやWebブラウザを使ってアクセスすることになる。もしもデバイスのOSがキーロガーなどのマルウェアに感染していたら、仮想デスクトップでの入力を盗み取られる心配がある。
一方、Windows to GoはOSを内蔵しているため、デバイスの起動はそのデバイスのネイティブOSではなくWindows to GoのOSで行う。Windows to Go使用時にはデバイスのHDD自体が無効になる。そのため、私物デバイスから社内リソースにアクセスする際のリスクが軽減する。
リムーバブルメディアのポータブルデスクトップには、インターネットに接続しないで作業できるという利点もある。ユーザーはインターネットに接続できないときでも会社用デスクトップをブートできる。
リムーバブルメディアも万能ではない
マイナス面もある。Windows to GoではOSをUSBフラッシュドライブから実行するため、キャパシティーが小さい。必要なアプリケーション全てを実行するには不十分である場合がある。
またこのタイプのポータブルデスクトップはハードウェアを選ぶ。仮想デスクトップの場合はクライアントコンポーネント対応のほぼ全てのデバイスからアクセスできるが、ポータブルデスクトップを使用できるデバイスは限られる。例えば、Windows to GoはUSBデバイスからのブートをサポートするPCでしか使えない。
さらにWindows to Goのようなポータブルデスクトップは保守しにくい。ノートPCのOSもそうだが、管理者はWindows to Goデスクトップがオンラインのときにしか修正プログラムの適用などの保守作業ができない。またWindows to GoデバイスはOSアップグレードに対応していない。Microsoftが新しいバージョンのWindowsをリリースしてもアップグレードはできず、管理者がフラッシュドライブのイメージを作り直さなければならない。
Windows to Goのようなタイプのポータブルデスクトップはオフライン作業が多い場合などには便利だが、基本的に仮想化の代替策にはあまり向いていないだろう。
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